食道癌患者における体組成と術前化学療法の有害事象、および、術後合併症に関する検討について
研究対象
「切除可能な進行食道癌に対する術前化学療法としてのFAP療法とDCF療法のランダム化比較試験」に登録された方のうち、化学療法開始前、手術前(化学療法終了後)、術後1年(前後3カ月を許容する)のCT画像が入手可能な症例です。
本研究の意義・目的
本邦における切除可能な進行食道癌に対する標準治療は術前化学療法(シスプラチン+5FU: FP療法)ですが、予後改善のためにはより強力な術前療法が必要と考えられています。FP療法にドキソルビシンを加えたFAP療法やドセタキセルを加えたDCF療法はFP療法に比べて高い奏効率が報告されており、我々は多施設共同で「切除可能な進行食道癌に対する術前化学療法としてのFAP療法とDCF療法のランダム化比較試験」を実施し、各群81例、計162例を登録しました。その結果、奏効率はFAP群:40%、DCF群:61%、2年無再発生存期間はFAP群:45.7%、DCF群:65.4%とDCF群で有意に良好でした。いっぽう、Grade 3以上の有害事象は好中球減少;FAP群:58%、DCF群:75%、発熱性好中球減少症;FAP群:17%、DCF群:39%と高率で、DCF群で多く認めました。また、術後合併症は肺炎; FAP群:24%、DCF群:12%、縫合不全;FAP群:3%、DCF群:8%でした。食道切除術は侵襲の大きな手術であり、術前化学療法の有害事象が増えると、化学療法の減量や中止、術後合併症の増加につながり、ひいては、長期成績にも影響を及ぼすと考えられます。治療開始前に有害事象や合併症のハイリスクの方を予測することは非常に重要です。
種々の癌種において低骨格筋量は化学療法の有害事象の増加、術後合併症の増加、および、予後の悪化と相関すると報告されています。食道癌においても治療前の低骨格筋量は術後呼吸器合併症の増加や予後の悪化と相関すると報告されています。「切除可能な進行食道癌に対する術前化学療法としてのFAP療法とDCF療法のランダム化比較試験」に登録した方において、体組成および、その変化と化学療法の有害事象、術後合併症との関係を明らかにします。
研究方法
化学療法開始前、手術前、術後1年のCT画像を研究事務局にメールに添付し提供します。患者の特定につながる情報は送付しません。CT画像をSYNAPSE VINCENT等の画像解析システムを用いて、骨格筋量、脂肪量等を測定します。
- 評価項目
- 化学療法前の体組成と化学療法の有害事象との関係
化学療法前後の体組成変化と化学療法の有害事象、および、周術期合併症との関係
術前の体組成と周術期合併症、および、予後との関係
術後1年の体組成と予後
化学療法前、および、術前から術後1年の体組成変化と予後 - 追加収集検査データ
- 白血球数、好中球数、リンパ球数、単球数、血小板数、CRP、アルブミン、体重
多施設共同研究 参加施設
大阪大学 消化器外科 土岐祐一郎
近畿大学医学部 外科学教室 安田卓司
大阪国際がんセンター 消化器外科 矢野雅彦
国立病院機構大阪医療センター 外科 平尾素宏
関西ろうさい病院 消化器外科 竹野淳
堺市立総合医療センター 胃食道外科 藤田淳也
大阪医科大学一般・消化器外科 河合英
JCHO大阪病院 外科 平尾隆文
NTT西日本大阪病院 消化器外科 藤田正一郎
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研究代表者及びお問い合わせ先
研究代表者/大阪急性期・総合医療センター 消化器外科 藤谷和正
研究事務局/大阪急性期・総合医療センター 消化器外科 本告正明
当院における研究責任者・情報管理責任者/安田 卓司 近畿大学医学部外科 教授
お問い合わせ先
白石 治 近畿大学医学部外科 医学部講師
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