お知らせ

ホームへ戻る

食道切除後にできる胸部背側の空洞を、胸部前方を通す経路で再建した胃管に付着する大網という脂肪組織を用いて充填する新規術式の安全性と有効性に関する後ろ向き研究について

情報公開文書
・第1.1版 2022年5月6日)
・第1.2版 2024年8月15日

研究課題名

胸部食道切除後の縦隔の死腔充填を胸骨後経路に挙上した胃管の大網を用いて行う術式の有効性と安全性に関する後方視的研究

研究対象

2012年1月から2022年3月までに近畿大学病院で食道癌のために食道切除術を受けられた患者さまの内、食道切除後にできた胸部背側の空洞を、胸部前方を通す経路で再建した胃管に付着する大網という脂肪組織を用いて前方から後方へ落とし込むようにして充填・被覆するという術式を受けた患者さまが対象です。

本研究の意義・目的

食道は、胸部中央の背側に位置する臓器で、周囲は気管・気管支、肺、大動脈、心臓という生命維持に不可欠の重要臓器に囲まれています。同部に発生した進行食道癌では、術前に化学放射線療法(抗がん剤+放射線治療)を施行後に手術をしたり、気管や気管支に腫瘍が拡がっていたために合併切除を余儀なくされる、あるいは腫瘍が進行し過ぎていたために腫瘍の一部を残した状態での切除を余儀なくされるという場合も少なくありません。その場合、食道を切除した後にできる空洞は呼吸や咳による胸腔内の圧変化を大きく受けるため、放射線治療でもろくなった組織や合併切除後に壁を修復したような脆弱な部分では圧変動の影響で破綻をきたすリスクがあります。また、空洞は細菌増殖の培地となりやすく、感染の増悪から胸腔内に膿が溜まって重篤になるリスクがあります。そのため空洞を何かで充填して潰しておくことが重要です。そこで用いられるのが胃の足側にのれんのように垂れ下がって付着している"大網"という免疫細胞を豊富に含む脂肪組織です。食道切除後の消化管再建は、胃を管状に形成し、胃管として頸部に持ち上げて行います。胃管を持ち上げる経路としては、元あった食道のスペースを利用して持ち上げる経路と胸骨の裏側に新たにトンネルを作成して胃管を持ち上げる経路の二つがあります。ただ、使用する大網組織は胃に付着していますので、当然食道切除後の空洞部分に沿って胃管を頸部まで持ち上げて大網を空洞に充填するのがこれまでの常識でした。しかしその場合、空洞の充填を優先するため胃管は元の食道の位置(空洞部分)を避けて持ち上げるしかなく、解剖学的には右の胸腔の背側に回り込むようにして再建されます。そのため吸気時の胸腔内の陰圧の影響を大きく受けるために、十二指腸液の逆流がより増悪されたり、食物の胃管から十二指腸への流れが停滞したりして、患者さんの生活の質(quality of life:QOL)は著しく低下します。そこで私達はもう一つの経路である胸骨の裏側を通して胃管を持ち上げながら食道切除後の空洞を大網で充填・補強する方法を新しく考案し、必要時には臨床応用をしてきました。本法では、食べ物が通る胃管は胸部の正中をストレートに通っているため、また胸腔内を胃管が通っていないために胃内容が停滞することは少なく、患者さんのQOLは維持されます。
これまでこの術式に起因する合併症を経験したことはなく、大網充填の効果も優れていると認識しています。そこで、我々の考案した新しい術式の有効性と安全性をしっかりとデータに基づいて検証し、その有用性を明らかにすることを目的に本研究を行うこととしました。我々の術式の有用性と安全性が明らかとなり、それを論文を通じて世界に発信し、必要な患者さんに適応していただくことができれば患者さんにとっても、また治療にあたる食道外科医にとっても利益は大きく、医学的、社会的意義も極めて高いと考えています。

研究方法

私達が新たに考案した術式の適応を開始した2012年1月から2022年3月までの期間に近畿大学病院で手術を受けられた食道癌の患者さまを対象とし、新規術式の安全性と有効性を電子カルテ内の情報を基に検証することとしました。実際に上記術式を追加した患者さまの情報のみを抽出して検討を行います。この研究で新たに取得するデータは一切なく、全て電子カルテ内の診療録および手術記録、それと上部消化管外科の食道癌データベース内にあるデータを利用するのみで、収集された情報を基にデータベースを作成して集計を行って評価します。情報の解析は、後述する研究代表者と研究分担者のみが行なうもので、それ以外の者が情報の解析に関与することはありません。本研究は、近畿大学医学部倫理委員会で承認を受け、医学部長による実施の許可を得て実施する研究ですが、その研究実施期間は倫理委員会での承認後から4年間です。

研究に用いる情報の種類

診療録から抽出される項目
年齢、性別、身長・体重、各再建経路長、検査データ、画像データ、病理データ、既往症、併存疾患、食道癌の状態(主腫瘍の局在部位、リンパ節転移の部位および転移個数に関する初診時の臨床評価情報ならびに術後病理所見情報、臨床的および病理学的進行度)、治療内容(術前化学療法、術前または根治的化学放射線療法の内容および手術術式)、術後合併症とそれに対する治療に関する情報。
手術記録から抽出される情報
術式、再建経路、手術時腫瘍進行度、切除度、吻合法、手術所見。
上部消化管食道癌データベースから抽出される情報
術後合併症の有無・種類。

個人情報の取り扱いについて

個人情報に関わるデータ(名前・生年月日・ID番号)はすべて匿名化され、いかなる個人情報も院外には漏出されないように管理します。プライバシーに関することが公表されることは一切ありません。また、この研究は近畿大学医学部倫理委員会の審査・承認ならびに近畿大学医学部長の許可を得て行なう近畿大学医学部外科学教室の単独研究であり、情報は近畿大学医学部以外に提供されません。

情報の管理責任者

安田卓司 近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門 主任教授

ご質問や研究に対する拒否の自由

本研究に関しましてお聞きになりたいことがありましたらいつでも担当医もしくは下記問い合わせ先までご連絡ください。また、本研究に情報を提供したくない場合はお申し出ください。お申し出いただいても今後の診療等に影響はありません。ただし、既に論文発表や学会発表にて公表されたデータとなっている場合には撤回はできません。
ご希望があれば、他の研究対象者の個人情報及び知的財産の保護に支障がない範囲内で、研究計画書及び関連資料を閲覧することが出来ますのでお申し出ください。また、また情報が本研究に用いられることについてご了承いただけない場合は、研究対象としませんので、下記問い合わせ先までお申し出ください。

研究責任者及びお問い合わせ先

研究責任者
安田卓司 近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門 主任教授
研究事務局(お問い合わせ先)
安田卓司 近畿大学医学部外科学教室上部消化管部門 主任教授
〒589-8511  大阪府大阪狭山市大野東377-2 近畿大学医学部外科学教室
TEL: 072-366-0221 内線(3110) / Fax: 072-367-7771

研究分担者

白石 治 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:准教授
加藤寛章 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:講師
平木洋子 所属:外科学教室上部消化管部門 職名:医学部講師
安田 篤 所属:外科学教室内視鏡外科部門 職名:准教授
新海政幸 所属:近畿大学病院医学教育研修センター シミュレーションセンター 職名:准教授
今野元博 所属:近畿大学病院通院治療センター 職名:臨床教授

  • 一般の方へ 診療案内
  • 医局員募集
  • 近畿大学病院
  • NCD 外科系症例データベース(NCD)への登録を行っております。
  • 近畿大学病院外科専門研修プログラム(KINDAIプログラム)について

このページの最上部へ戻る