食道・胃・十二指腸臨床内容
疾患名 | 治療方針 |
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頸部食道がん |
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胸部食道がん |
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食道胃接合部がん |
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胃がん |
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良性粘膜下腫瘍 |
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悪性粘膜下腫瘍 |
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食道アカラシア |
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食道裂孔ヘルニア・ 逆流性食道炎 |
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食道咽頭憩室 (Zenker 憩室) |
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食道破裂または胃・ 十二指腸穿孔 |
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食道がん診療
早期から超進行がんまで全てに対応
ご紹介頂いた症例は、外科、消化器内科、腫瘍内科、放射線治療科で構成される上部消化管Cancer boardで検討して、個々の症例に対して最善の治療を決定します。Cancer boardは外科が中心に開催していますので、まずは進行度にかかわらず外科にご紹介頂ければと思います。
隣接臓器浸潤が疑われて切除困難・・?
多数の転移があって治癒は困難・・?
と思われる症例でも大丈夫です。他院で切除不能と診断されても実際切除可能な例は少なくありません。転移が多くても前治療で著効が得られれば十分治癒はあります。今は強力な補助療法があり、超進行がんであっても、そのresponse次第で結果は大きく変わります。
気管食道瘻が形成されているのですが・・・?
それでも大丈夫です。ご相談頂ければ準緊急で対応させて頂きます。我々はどんな症例でも可能性を目指して治療させて頂きますので、「困った・・?」と思われたらいつでもご連絡頂ければと思います。皆さんと協力して1人でも多くの食道がん患者を救うことができればと願う次第です。
腹臥位胸腔鏡下食道切除術で低侵襲に治療
当科では、白石治先生が積極的に低侵襲食道切除術に取り組み、高度進行がんでも胸腔鏡の拡大視と低侵襲性を最大限に活用して切除しており、ほぼ全例が鏡視下による低侵襲手技で手術が完結しています。特に左側に高度進行した食道がん症例に対しては、白石先生が考案して積極的に応用している左右の胸腔から胸腔鏡下に剥離を行い、安全かつ良好な視野の下で手術を行うことで治癒切除率の向上を図っています。
これらの低侵襲手術に加えて、食道がん手術に精通した麻酔科およびICU医師による周術期管理、理学療法士による積極的なリハビリテーションや言語聴覚士による嚥下指導、歯科衛生士による口腔ケア、そして食道癌看護に精通した看護師によるケアなどのチーム医療の成果で、食道外科専門医認定施設での術後肺炎の発生率:13.9%に対して、当科では3.8%にまで抑えることができています。
近年は高齢の患者さんも増加しています。進行癌が多い食道がんでは栄養状態が低下している患者さんも多くおられます。でも、以前と比べて栄養療法も改善し、手術侵襲も軽減しています。"南大阪でがん難民を一人も出さない"をモットーに、どんな患者さんでもまずはお引き受けして、その患者さんにおける最善の治療を検討させていただきます。遠慮なく、いつでもご紹介頂ければと思います。なお、ご相談したい事項があるときは、別項の相談フォームを利用してご相談いただければ対応させていただきます。
胃がん診療
早期から高度進行がんまで進行度に応じた治療を提供
ご紹介頂いた症例は、食道がん同様に外科、消化器内科、腫瘍内科、放射線治療科で構成される上部消化管Cancer boardで検討して、個々の症例に対して最善の治療を決定します。Cancer boardは外科が中心に開催していますので、紹介する診療科に悩む時は外科にご紹介頂ければと思います。
早期胃がん症例
まずは内視鏡的治療で治癒が得られるか否かを検討します。内視鏡的治療は消化器内科が担当し、年間約150例の治療を行っています。
内視鏡的治療で治癒が困難な腫瘍に対しては、腹腔鏡下に胃切除術を施行します。当科では2001年から積極的に低侵襲手術に取り組み、2020年12月までに合計911例の腹腔鏡下胃切除術の実績があります。また、2017年からは再建も腹腔鏡下に行う完全鏡視下手術とし、現在ではほぼ全例で完全鏡視下に手術が完了しています。
さらに2018年からはより精緻な手術が可能なロボット支援胃切除術も導入し、安田篤先生が積極的に取り組んでいます。現在は症例を限定してではありますが適応をStageⅡにまで広げて、より根治性高く、より安全に、より低侵襲に治療しています。
進行胃がん症例
近年の胃がんに対する薬物治療の発展はめざましく、抗がん剤による新規レジメンのみならず、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により大きく様変わりしてきました。また、投与時期として術後のみならず術前にも施行されるようになり、投与経路としても静脈内のみならず腹腔内化学療法も臨床試験として進められています。さらには化学放射線療法を組み合わせた臨床試験など多岐に亘り、それらを組み合わせて3次治療、4次治療と治療を連続して成績向上が図られています。その結果、最初は治癒切除不可能と思われた症例でも前治療で非治癒因子が消失し、conversion surgeryとして治癒の可能性を目指して手術が追加される時代になっています。
進行胃がんにおいては腹膜播種が最も治癒困難な転移形式で、通常治癒不可能とされます。ただ、この症例に対しても我々は諦めることなく、腹腔内化学療法を開発して長年パイオニアとして取り組んでいます。
腫瘍が胃壁を超えて進展している・・・?
すでに腹水が貯留して腹膜播種は明らかと思われる・・・?
私たちは最初から諦めたりはしません。腹膜播種があっても腹腔内化学療法を主軸とする薬物療法により著効が得られて手術により長期生存が得られている患者さんは少なくありません。我々はどんな症例でもあきらめずに可能性をもって治療させていただきますので「困った・・?」と思われたらいつでもご連絡いただければと思います。皆さんと協力して1人でも多くの胃がん患者さんを救うことができればと願う次第です。
腹腔内化学療法
当科では、前述のとおり腹水細胞診陽性や腹膜播種陽性の症例に対しパクリタキセルによる腹腔内化学療法を積極的に行っています。有望な治療法でありますが、残念ながらまだ保険適用には至っておらず、保険適応を目指した自費診療による臨床試験として行っているところです。したがって、施行できる施設は限られており、近畿圏では9施設のみ、南大阪地域に限っては当院のみとなっています。そのため、沖縄、佐賀、岡山、岐阜、京都など全国各地から当院へ受診される患者様もおられます。
腹腔内化学療法の著効した症例には、審査腹腔鏡で腹膜播種に対する治療効果を確認し、消失して根治切除可能であれば積極的に切除(conversion surgery)を行っています。その結果、他の医療機関で「予後は3ヶ月」との告知を受けた患者さんでも、長期にわたり通院されている方が数多くおられます。
近年は80歳後半から90歳前半の胃がん患者さんも少なくありません。以前と比べて麻酔や手術の侵襲も軽減しており、全身状態が良ければ手術により生活の質や自立した行動をそれ程落とすことなく治療することが可能になっています。"南大阪でがん難民を一人も出さない"をモットーに、患者さんにおける最善の治療を一人ずつ個別に検討させていただきます。遠慮なく、いつでもご紹介頂ければと思います。なお、ご相談したい事項があるときは、別項の相談フォームを利用してご相談いただければ対応させていただきます。
その他の診療
食道や胃の粘膜下腫瘍
胸腔鏡または腹腔鏡下に切除を行います。良性腫瘍であれば、臓器は温存して腫瘍のみを核出して切除します。悪性腫瘍であれば、発生した臓器の壁と共に腫瘍を切除します。
胃食道逆流症(GERD)または逆流性食道炎
GERDの中で、内視鏡検査でびらんや潰瘍などの粘膜障害がみられるものが『逆流性食道炎』であり、胸やけや痛みなどの症状を強く訴えるようになります。
この逆流性食道炎を放置したままにすると下部食道の瘢痕狭窄や脱落した食道の粘膜が胃の円柱上皮で被覆・再生してバレット食道を形成するリスクがあります。バレット食道は食道がんの発生率が約10倍程度高いと報告されているので非常に注意が必要です。ほとんどの場合、内服薬治療(H2ブロッカーやプロトンポンプ阻害剤などの胃酸抑制薬)で改善しますが、効果がない場合は外科手術(噴門形成術)が選択されます。代表的な手術方法としてはNissen(ニッセン)法やToupet(トゥーペ)があります。逆流症状でお悩みの方やお薬で治療してもよくならない方はぜひご相談ください。