食道・胃・十二指腸胃癌腹膜播種に対する高度先進医療について
高度先進医療への取り組み
胃がんの転移のうち、最も多く、また、治療が難しいのが腹膜播種です。腹膜播種は胃がん手術後に不幸にして再発する場合にも最も頻度の高いものです。
腹膜播種は、胃がん細胞が大きくなり胃の壁を突き抜け、壁の外にこぼれ落ち、腹膜に付着して発育するという転移様式です。腹膜にがん細胞が広がると、手術で治すことはできません。そのため、腹膜播種の治療は抗がん剤が中心となりますが、十分に効果のある治療法は未だ確立されていません。その理由として、腹膜播種には抗がん剤の内服や点滴などでは薬が届きにくいことがあげられます。
そこで、既に腹膜播種の存在する方や『手術で目に見える範囲のがんは取りきれたが、腹膜への転移・再発の危険が一般の胃がんより高いと思われるサイズの大きな胃がんの患者さん』に対して、パクリタキセルという抗がん剤を腹膜播種の存在する場所に、抗がん剤を投与するための腹腔ポートを用いて直接投与するという方法をとっています。この方法は海外では既に卵巣がんを中心として行われており、安全性や有効性も確かめられています。
この抗がん剤を腹腔内に投与する治療方法は、日本では保険診療が現在のところ認められていませんので、厚生労働省が定めた「高度医療」という制度に基づいて実施します。「高度医療」とは、現在保険の適応が認められていない先進的な医療技術を安全かつ低い負担で受けたいという患者さんのニーズに対応するため、一定の要件の下に保険診療との併用を認めるという制度です。