食道・胃・十二指腸胃癌について
ア. 胃について
- (a) 胃の働き
- 口から入った食物は食道を通って胃に運ばれます。胃では消化液(胃液)と混ぜられ消化・吸収されやすい状態となり腸へ運ばれます。胃の入り口は噴門(ふんもん),胃の出口は幽門(ゆうもん)と呼ばれ,それぞれ消化液や食物が逆流しないようにしています。
- (b) 胃の構造
- 胃はみぞおちのあたりに位置しており,食道と十二指腸の間にある臓器です。食道と十二指腸の間の短い方を小弯(しょうわん),長い方を大弯(だいわん)と言います。胃は口側(食道との境)から順に胃底部(胃穹窿部(いきゅうりゅうぶ))、胃体部、幽門部と呼ばれます。また,胃壁は内側から粘膜層(ねんまくそう)(M),粘膜筋板(ねんまくきんばん)(MM),粘膜下層(ねんまくかそう)(SM),固有筋層(こゆうきんそう)(MP),漿膜下層(しょうまくかそう)(SS),漿膜(しょうまく)(S)の6層構造になっています。胃の全体図
イ. 胃がんとは
胃の粘膜から発生する悪性腫瘍を胃がんと言います。粘膜に発生したがんが外に向かって粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜と深く進行すると転移の頻度が上がり、生命予後が悪くなります。
粘膜層または粘膜下層までにとどまるがんを早期胃がんといいます。固有筋層より深くにまでがんが及んでいるものを進行胃がんと言います。粘膜層までにとどまっている場合はほとんど転移を起こしません。粘膜下層まで達すると10数%、固有筋層より深くなると50%前後あるいはそれ以上のリンパ節転移がみられるようになります。
胃がんの転移の形式は次の3つに分けられます。
- リンパ節転移:もっとも多い転移形式で、胃壁のリンパ管に侵入したがん細胞が胃周囲のリンパ節、さらにはより遠くのリンパ節へ入り込んで増殖します。近くのリンパ節に転移しても手術で取り切れれば治る可能性があります。
- 腹膜転移:胃壁の一番外側の漿膜をがんが突き破ってお腹の中(腹腔内)にばら撒かれ、胃、小腸、大腸、肝臓や膀胱を覆っている膜(腹膜)の上で増殖します。腹膜播種ともいいます。
- 血行性転移:胃壁の血管に侵入したがん細胞が他の臓器(肝臓がもっとも多い)で増殖します。
腹膜転移や遠隔転移があるともっとも進んだ病期(Ⅳ期)となり通常は手術の適応とはなりません。
ウ. 胃がんの症状
食欲不振,嘔吐,出血,全身倦怠感,膨満感,体重減少などがありますが,いずれも胃がんに特徴的な症状ではなく慢性胃炎,ピロリ菌感染や胃潰瘍でも起こる症状です。約15%は無症状です。早期の胃がんの場合は症状がなく,健康診断で偶然発見されることが少なくありません。